キャリアデザインのすすめ

仕事とライフスタイルに悩む弟妹達へ。人生は自分でデザインしよう。

書評:『震える牛』 相場英雄著

 

震える牛 (小学館文庫) [ 相場英雄 ]

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感想(14件)

 

 

相場英雄氏はジャーナリスト出身の小説家

 

 

相場英雄(あいばひでお)氏は1967年生まれ。ジャーナリストとして長く活動されておられたので、小説でもジャーナリストの登場人物が効果的に現れますし、ノンフィクションのようなリアルなデータも信憑性があり、たいへん勉強になります。

数か月前に書店で相場英雄氏の『血の滴』を手に取って面白そうだなと思いましたが、その場では購入しませんでした。ネットで調べて著者の過去の作品をいくつかピックアップした上で、まずはこの『震える牛』から読んでみようと思った次第です。

 

とても面白かったので、6~7冊連続で読んでみようかな、と。

 

 

『震える牛』の感想

 

 

ネタバレになるのであまり詳しく書きたくないですが。

読もうと思ったきっかけは、中野の居酒屋強盗殺人事件という未解決事件(架空の事件)がテーマとなっていたからです。

未解決事件というのはやはり不思議で心惹かれるものがあります。

被害者の方は本当に無念だろうと思いますし、解決を望んでいます。が、たとえば『世田谷一家惨殺事件』などは、証拠品もたくさんあるのにどうして解決しないんだろう?ととても不思議に感じるのです。

 

そういった未解決事件を扱い、迷宮捜査班が地道に継続調査をつづけるというストーリーにひかれて読み始めました。

未解決事件を解くキーワードがいくつか出てきて、読者(私)もなんとなくそれが結びついたり、からくりを予想したりできるのですが、決定的に明快につながらずモヤモヤしたまま読み進んでいきます。どうなっているんだろう?という不思議な気持ちが高まっていきます。その過程でとても為になる知識も得る事ができましたし、安定感のあるストーリー運びで、最後にはすべてが種明かしされ、モヤモヤが綺麗にスッキリと解消されました。

 

著者の相場英雄氏はジャーナリストだけあって、専門的なことも含めて非常に丁寧に取材がされていました。実際の企業と重なる部分が大いにあるので、ノンフィクションかルポルタージュのような扱いになっても良いのかもしれませんが、この物語には田川信一というとても良いキャラの刑事が登場します。この田川刑事が物語をとても味のある魅力的な小説へと変貌させていると思います。

田川刑事が接する様々な登場人物も実に魅力的でリアリティがありますから、きっと相場英雄氏のまわりにいる人物がモデルになっているのかもしれませんね。

スナックのチーママ奈津代もリアルだなぁ、と。他の刑事の嫌がらせのせいで情報を出し惜しみにしていた事実を、田川に対して「ちょっと悪いな」と罪悪感を抱いている感じなんて、ほんとによく描けてます。

こういう、一井の人々や、大企業の登場人物、政治家などの言動がすべて現実的で、物語に説得力がありました。

 

ドラマ化されてDVDも出ているみたいです。

 

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食品偽装の問題

 

 

ネタバレするのであまり書きませんが、食品偽装の問題も扱われています。

私は大半の日本の消費者はおろかだと感じています。

デフレのせいで物価はどんどん下がっていますが、論理的に考えれば、それぞれの商品の値段が妥当であるか現実的であるかわかるはずです。

放射線汚染の問題もそうです。「食べて応援」をしてよいのかどうか、きちんと考えている消費者はどれぐらいいるのでしょうか。放射能物質はセシウムだけではありませんよ。

農薬もそうです。中国のホウレンソウ栽培の際に散布している農薬が問題になっていましたが、同等に危険な処理をしているものが中国以外の国にもあります。とても身近な国に。

 

今はネットで多くの情報が取れる時代です。ある程度の時間をかけて自分で調べれば、食品の危険性の情報もはいってくるのです。でも、自分の力で調べない。CMのイメージ、政府の説明を鵜呑みにして安全だと思いこもうとしている消費者のいかに多いことか。

 

年寄りは気にせず好きなものを食べればいいと思いますよ。

でも子供を持つ親であれば、子供の口に入るものは自分で安全性を見極められるように知識を持つべきです。それができている賢い親御さんがいる一方で、あまりにも無頓着で無知な主婦が多すぎる。

 

この本のなかで「消費者はバカだ、味の違いもわからない」という表現が出てきますが、ある程度あたっています。味のわからない人も多いですものね。

そういう事実がある以上、それを悪用しようとする業者も出てきてしまいます。もちろんそれは間違っていますし、罰せられるべきですが、消費者の無知を悪用されないように、我々はもっと賢くならなければいけません。

 

モノの値段にはすべて理由があります。輸入食品であれば輸送コストがかかるわけですし、有機栽培の野菜であれば防虫や除草に手間がかかります。それらは費用として物価に反映されるわけで、その価格が異常に低くあるはずがないのです。

 

こういった当然の帰結を理解しようとする消費者が、デフレが続く日本では徐々に減っています。この本を読んで、今一度食の安全について考えるきっかけにしてほしいと強く感じました。